乳がんの診断はマンモグラフィ撮影が基本

乳がんの患者数は年間約4万人、死亡者数は約1万人となっており、この50年で約2~3倍と急激に増加しています。それでも欧米諸国に比べると人口10万人当たりの患者数は1/3程度ですが、今後も増加すると考えられています。


検診の受診を促す啓蒙運動

現在、乳がんは部位別の罹患率でみると第1位のがんとなっています。乳がん検診やマンモグラフィーや乳腺エコーなどの画像診断技術の進歩によって、従来は発見できなかった乳がんが多く見つかるようになったという見方もできますが、乳がんそのものが増えていることは間違いありません。

乳がん増加の背景には、高カロリー・高脂肪の食生活、晩婚化、障害の出産回数の減少などのライフスタイルの欧米があるとされています。乳がんの発症には女性ホルモンが深く関係していると考えられています。初潮の低年齢化と、晩婚・少子化に伴う初潮から第一子出産までの期間が長期化することで、月経のある年月が長い、すなわち女性ホルモンの活動期間が長くなくることで、乳がんの発症リスクが高まってしまいます。

乳がんの検査は、まず乳腺外科の医師がしこりを確認したり、乳頭のただれや変形がないかをチェックする「視触診」が基本となります。しこりの上の皮膚のひきつれ、エクボ状のへこみも重要な所見となります。腋窩、鎖骨上のリンパ節などの触診も行われます。

次いで被ばく量の少ないX線を利用したマンモグラフィで画像診断を行います。また超音波(エコー)診断も有効です。マンモグラフィは、触診では発見が困難な乳がんを微細石灰化という所見で発見する点では有効ですが、若年層のように乳腺組織が豊富な場合は超音波検査の方が優れています。乳頭から血が混じった分泌液が出る場合、分泌液の中にがん細胞がないかどうかを調べるために「細胞診」も同時に行います。

これらの検査でほぼ診断がつきますが、乳がんの疑いが残る場合は、しこりの部分に針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で調べたり、太い針で少量の組織を吸引採取する方法(マンモトーム生検など)という方法もあります。しかしこれらの検査でも診断がつかない場合は、しこりをとって調べる試験切除を行います。

近年はこれらの診断に加えて、乳房内の乳がんの広がりの程度を判定し、乳房温存療法で切除範囲を正確に設定するためにMRIやCTなどの検査も行われます。また、乳頭分泌物に血が混じっている場合は、乳頭から細い内視鏡を挿入して乳管の中を観察する「乳管内視鏡」という検査もあります。

海外旅行から帰国後の発熱への対処

海外渡航者が帰国後に発症した発熱したケースを集計した欧米機関の報告によると、発展途上国からの帰国者の2~3%に発熱が認められ、その原因の半数以上は感染症となっています。

熱帯性マラリア等に注意

感染症の起炎菌としては、マラリアが最も頻度が高く、以下、気道感染、下痢、デング熱、肝炎が続いています。欧米人と比較してアフリカ諸国を旅行先と選ぶ日本人はまだまだ少ないので、マラリアは比較的少ないとされています。

病気の鑑別の際に重要な情報は症状が現れるまでの潜伏期で、短期・注記・長期・超長期の4期に分けられます。短期のものとしては1~2日のインフルエンザ、1週以内の髄膜炎菌性髄膜炎や黄熱があります。1~2週間の中期としては、熱帯性マラリア、デング熱、腸チフス・パラチフス、レジオネラ、SARS、破傷風、日本脳炎、アメーバ赤痢、エボラ出血熱などがあります。

2週間以上2ヶ月以内の長期には、A型肝炎、E型肝炎、Q熱が、2ヶ月以上の超長期としてはB・C型肝炎、結核、HIVがあります。しかし、中には潜伏期の幅が広いものがあり、マラリア、アメーバ赤痢、狂犬病は2週間から数ヶ月、場合によっては数年の間潜伏していることがありますので、あくまでも診断の目安と考えます。

次に重要なのは、感染形式です。蚊、犬などの動物の刺咬・接触、土壌との接触、不衛生な飲食物、注射の有無などが確認されます。その他の情報として、既に受けた予防接種の日時・回数、ワクチンのタイプ、WHOやCDCの感染症流行情報と旅行先の照合、マラリア予防薬の内服状況などが役に立ちます。

初診時に必要性の高い検査は、白血球数、好酸球数、血小板数、肝機能、血液培養(尿検査、胸部エックス線写真)です。検査所見の特徴としては、多くのウイルス性疾患、マラリアでは白血球数は正常もしくは低下を示します。チフスでは好酸球数が減少し、寄生虫の中でもぜん虫では増加することが多いですが、マラリア、アメーバなどでは増えません。

海外渡航後の発熱患者の診断で最も重要な古都は、5日以内に治療を受けないと致死率が50%を超えるとされる熱帯性マラリアを見逃さないことです。血液検査や簡易診断キットにより診断できますが、専門病院を紹介されることもあります。

旅行先における子供の食物アレルギー

旅行における楽しみにひとつとして、その国・地方の食べ物を愉しむことを挙げる方も多いと思います。しかし、食物アレルギーがある子供にとっては、食べても大丈夫なものだけが食卓に出される過程とは違って、旅行そのものが苦痛となることがあります。

食物アレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)は食生活や体質によって異なるため、国や地域によって特色が見られます。アメリカではピーナッツ類が原因の第一として挙げられますが、魚介類をよく食べる至りやフランスでは魚介類が、そして日本では鶏卵、乳製品、小麦が三大アレルゲンとなっており、次いで蕎麦、魚介類、果物類、エビが挙げられています。最近は欧米のようにピーナッツ類による食物アレルギーも増えて着ています。

基本的に原因物質は個人個人によってその種類や程度が異なるのでその確認をすることが大切です。緊急時に備えて、看護師に目的地周辺の医療機関を予め調べてもらったり、旅行の出発前に医師の診察を受け、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬などの緊急用の常備薬を処方してもらうことも大切です。

除去の目安となるアレルギー物質を含む食品表示に関しては、日本の取り組みは早く、平成13年の食品衛生法関連法令の改正に伴い、アレルギー物質を含む食品の表示が義務付けられました。欧州ではフランスのアレルギー予防協会などが中心となって、甲殻類、魚類など12の物質の表示に取り組み、EU加盟国の関係団体とEUレベルでの実現を目指していますが、海外におけるアレルゲン表示は十分ではありません。